photos by Prum Bandiddh

プロジェクト

ミャンマーのSoCAへの現代アートプロジェクトに対する助成

Myanmar
SoCA( School of Contemporary Art )
SoCA( School of Contemporary Art )

The Documentation Project of Contemporary Art 2020 Vol.3 / Abstraction of Breathing

本プロジェクト「Abstraction of Breathing(呼吸の抽象化)」は、SoCA( School of Contemporary Art )の創設者であるアウン・ミヤット・タイ氏がキュレーションを行い、当財団理事の藪本雄登が共同でキュレーションとサポートを行っている。

プロジェクトの背景

本プロジェクトは、アウラ現代藝術振興財団の助成により、ミャンマーにおけるオルタナティブなアートシーンの記録と、ミャンマー現地のアートシーンのデータベース化を出発点として取り組みを開始している。その後、現代アートの実践と教育的アプローチも包括して実施することを意識してきた。ミャンマーのアートシーンには、理論的な調査研究とキュレーターとしての実践が必要不可欠になっているが、インフラ整備が十分になされていないのが現状となっている。

日常生活の中におけるアートとの関係は、商業マーケットの美術作品を除き、ますます疎遠になっている。ミャンマー国内のアートインフラの状況を再考するための効果的な方法は、技術的な方法を再検討することにあり、今回、写真、ビデオ、動画等を通じた芸術表現の実施は、ミャンマーにおいては、極めて新しい取り組みだが、これらの新しい表現を記録に残していくことは、将来のミャンマーにとって意義深いことであると確信している。私達は、若い世代の現代アーティストが、独自の表現で、ミャンマー独自の歴史、文化、アイデンティティを踏まえて、世界に発信していくことを期待し、本プロジェクトを推進している。


Short teaser video of "ABSTRACTION OF BREATHING"

Abstraction of Breathing: Exploring Multidisciplinary Art in Myanmar Vol:3 Facebook


プロジェクトの目的

本プロジェクトの目的は、現在のパンデミックを通じ、ミャンマー国内や地球全体の生態系や政治的な危機に対応するため、ミャンマーの現代アーティストの表現や解釈を比較し、ミャンマーにおけるローカルの事象を現代アートを通じて反映し、それを記録し、世界に発信することである。

プロジェクトのコンセプト

ミャンマーにおいて「呼吸」とは、哲学用語で「 Phyit Chin 」や「 Pyiat Chin 」と呼ばれる「死と復活」を中心に展開する分解と再構築を意味する概念としてよく知られており、他方、科学用語として生物の細胞増殖の意味として使われている。

また、呼吸( ātman の語源)は、仏教哲学やヴェーダ哲学の探求の中において、人間に内在する意識や存在に関するもっとも根源的な現象である。 息を吸ったり吐いたり、身体を物理的に動かすことによって、私たちは身体的にも精神的にも均衡を維持している。
 
ジル・ドゥルーズの『スピノザと表現の問題』では、身体と心の関係について述べているが、哲学モデルとして身体を利用し、ドゥルーズは次のように述べている。

「身体が他の身体と『遭遇』するとき、あるいは思想が他の思想と『遭遇』するとき、二つの関係が時に結合して、より強力な全体を形成し、時に一方が他方を分解し、その部分を破壊することが起こる。私達は、ある身体が私たちの身体と出会い、その身体と統合されたときに喜びを感じ、逆に、ある身体や思想が私達自身を脅かすときに悲しみを経験する。」
 
このように私達の身体や心は、刻々と変化する地球の生態系の過程に類似している。移民や差別等の人間の行為により、心理的にも物理的にも地球は危機に瀕している。その時、私達の欲望や生存本能は、これらの混沌を理解し、対応するために、数多くの問いを生じさせるだろう。
 
Abstraction of Breathing では、これらの地球全体の現象と人間の意識は、密接に関連していることを提示する。ラテン語において「抽象化( Abstraction )」は「引き剥がす( to drag away )」ことを意味し、地政学的な地図上から自分自身の意識や存在を引き剥がす。そして、ミャンマーの現代アーティストによる視覚的な表現により、引き剥がされた意識や存在の認識を再構築/再提示することを試みる。

2021年1月
Aung Myat Htay/Yuto Yubumoto

詳細はこちら>>


SoCA( School of Contemporary Art )について

SoCA は、2015 年よりヤンゴンでオルタナティブなアートの教育を目的としたアートコレクティブである。地域のアートコミュニティの構築と、若手アーティストの現代アートへの新たなプラットフォームの構築を目指している。SoCA では、オンライン、公募展、クロスメディアの国際ワークショップなど、様々なプログラムを実施してきた。SoCA のアートプロジェクトは、国際的なつながりの中でさらなる知識とつながりを得たいと考える地元の美術学生を支援するために、無償で自主的に組織されたものであり、学習、制作、現代美術の実践と研究への戦術的なアプローチを提供している。また、地域の芸術家コミュニティにおける創造的な知的交流や対話のためのプラットフォームとなっている。その他SoCA は、ヤンゴンを拠点に、オンラインプログラムやアーティストトーク、アートワークショップや展示イベント等のイベントも運営している。