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波が形成する砂紋のように Yohei Yama

Vietnam

ホーチミン在住の日本人コンテンポラリーアーティストYohei Yama。 写真家であった彼は、元々絵を描くことを目指してきたわけではありませんでしたが、不思議な巡りあわせで画家となった経歴を持っています。
2019年6月28日〜9月27日の期間、ホーチミンのVIN GALLERYにて開催された個展 ” PHENOMENON = (TIME X SPACE)” の作品の中から、会場の様子とともにYohei Yamaの創作世界にふれてみたいと思います。

Yohei Yama 作品の世界観
今ここに存在しているという自分の証として

彼にとっての創作とは、海辺で波が寄せて返すたび砂に文様を描くように、自然の中のその瞬間の 、現在から過去、そして未来をつないでいく、今そこに存在している自身の証です。

それは銀河を構成する星々

彼の作品には幾層ものミニマルな線が描かれています。その上には銀河を構成する星のように点が散りばめられています。その点や線は、同じように見えますが、一つ一つが違う個性でできたものの集合体です。何万光年の彼方から届く星の光のように、それを見る私達もまた星の上の住人であり、もしかしたらもう無くなつてしまっているかもしれない星の光を見つめているのです。

「くぐる」三角形のオブジェ

PHENOMENON = (TIME X SPACE)の会場には絵画の他に三角形のオブジェが入り口に置かれました。三角錐を思わせるこの三角形は、やはり最小の頂点で構成されるミニマルなものです。表と裏がそれぞれ違う蛍光色で塗られており、この三角形をくぐるとそこはもう外界とは異なる世界であることを意味しています。そう、これは鳥居の役割を持っているのです。

Yohei Yamaの不思議な経歴

Yohei Yamaは元々写真家でした。それが画家へとキャリアを大きく変え、海外に住むまでに至ったのは、およそ十年前にフランスのアルルで開催された世界的に有名な写真フェスティバルがきっかけでした。もし海外で自分の写真を外国人に見せたらどんな反応が返ってくるのだろう。そんなことを考えるようになると行動せずにはいられなくなり、単身アルルに乗り込みました。
しかし世界中から写真家やオーディエンスの集まるフェスティバル期間中、予約もなく飛び込んだ彼には作品発表の機会はおろか、宿泊できる宿さえない状態でした。
途方に暮れながらも公園で寝泊まりしながら、持て余した時間を使って彼は路上で絵を描くようになります。すると次第に見物客が増えてきて、暇潰しに描いていただけの絵が売れ始めたのです。 絵が売れるようになると、今度は展覧会を勧める業界関係者が現れ、個展が開催され評価を受けるうちに、とうとうフランスでプロの画家として活動することになったのでした。
その後海外を中心に個展を展開し、現在は、早くから彼の絵を認めていたVIN GALLERYとの縁もあり、ベトナムのホーチミンに拠点を移して創作活動を行っています。

日本人とは思えない色使いの作品が並ぶ展覧会場。銀河と鳥居、そして浮かぶ風船。会場全体が作品であるかのようなユニークな構成力。
今度はさらに大きな会場でYohei Yamaの新作を見る機会が待たれます。

文責: neu