Exhibitions
The Factory Contemporary Arts Centre
Jun 19 - Oct 04, 2020
Hương Ngô ‘Having Been Lost in Plain View (Breathing Photo)’ 2020. Moving still, color, looped.
Performed by: Yến Hải Nguyễn. Courtesy of the artist.
All images by courtesy of The Factory
アーティスト Hương Ngô による個展「Lost from View」は、女性の思想、役割、見方を掘り起こし、歴史がどのようにある特定の原因とその影響を記憶し価値づけるかを描き出します。この個展はとりわけ、1930年代の共産主義の台頭を導いたその力強さ、粘り強さ、回復力、勇敢さによって、ベトナムの国民的英雄であるグエン・チ・ミンカイ(Nguyễn Thị Minh Khai)の生き方、特に、ベトナムの反植民地運動へのコミットメントと独立願望の中で具現化した多くの偽名にインスパイアされています。この展覧会のためにNgôは、この著名な人物だけでなく、革命の時代、時には悲劇的な終わりを迎えた他の女性たちの生涯への扉を開くために、記録文書、文献、写真を参照しました。Ngôは、性、知性、美についての社会的視点が、ジェンダー、人種、権力に関する固定観念と植民地主義的理解に結びついた、複雑な文化的翻訳にどのようにはまり込んできたか(そして今もそうであり続けるか)を明らかにするために、このような方法をとりました。
‘Lost From View’. A solo show by Hương Ngô (Installation view, The Factory Contemporary Arts Centre, HCMC, Vietnam, 19 June - 30 Sept 2020)
‘Lost From View’. A solo show by Hương Ngô (Installation view, The Factory Contemporary Arts Centre, HCMC, Vietnam, 19 June - 30 Sept 2020)
歴史を通して、女性は男性の欲求と、彼らによって女性がどのような役割を果たすことが許されているかという解釈が社会的に支配的に決定づけられた世界において、存在の視認性を獲得するために戦ってきました。それは宗教の教義や、政治経済の家父長制、そして何世紀にもわたって女性を男性の対象物(および財産)としてきた文化的伝統における義務の認識です。重大な勇気が、20世紀の男女の権利平等に対する社会的認識に変化をもたらしました。たとえば1811年、伝説的な著書『分別と多感』を「A Lady」として匿名出版したイギリスの作家ジェーン・オースティンのように。1820年代、黒人奴隷とアフリカ系アメリカ人社会における女性の闘争との関係を明らかにし、奴隷制廃止論者として名高いソジャーナ・トゥルースのように。あるいは、熱心なバーブ教徒として崇敬されながら、男性の面前で「ヴェールをとった」ことを理由に1852年に処刑されたイランの詩人・神学者ターヘレのように。ベトナム国内では、紀元前40年に中国軍を破ったトルン姉妹の歴史的遺産が、独立への愛国的情熱の中で兄弟、夫、息子を助けた多くの若い女性によってしばしば思い出され、早くも1913年、ファン・ボイ・チャウ(Phan Bội Châu)の戯曲「Trưng Nữ Vương(トルン・クイーンズ)」で演じられたことが明らかになっています。「現代美術はまた、武力紛争における女性の重要な役割を強調してきました。例えば、第二次インドシナ戦争では、北ベトナムの女性が武器を手に取り、共産民兵に参加しました。Nguyễn Thụ や Tôn Đức Lương などによる社会主義リアリズムの作品の多くは、女性の身体的強さと砲術への自信を誇る女性たちを描いています」1 。 アーティスト Hương Ngôが、特に1930年代から40年代にかけてのベトナムを中心に女性の経験を具現化する探求を始めたのは、国粋主義熱の高まりへの対抗です。
1. Roger Nelson, ‘Modern Art of South East Asia: Introductions from A-Z’. National Gallery of Singapore, 2020, pg. 248N
Hương Ngô. ‘Existing Surveillance Photographs, List of Aliases, and Forged Chinese Passport for Nguyễn Thị Minh Khai (Archives Nationales d’Outre Mer)’ 2017. Archival pigment prints on MOAB metallic silver. 25 x 35cm (Installation view, The Factory Contemporary Arts Centre, HCMC, Vietnam, 19 June - 30 Sept 2020).
Hương Ngô. ‘Livre du Poche’ 2018. Books. Installation variable (Installation view, The Factory Contemporary Arts Centre, HCMC, Vietnam, 19 June - 30 Sept 2020).
展覧会「Lost from View」では、記号についてのコンセプチュアルな作品が展示されています。Hương Ngôは主に文章の表示に頼って、紙と絹に印刷された様々な出会いを提示し、それによって歴史的な文書 ー手紙、架空の小説、電報、私的証言、脚本、身分証明書ー が「介入」され、彼女は極めて意図的に、それに続く物語を読めないように、断片的には見えなく、またさらなる翻訳を必要とするようにしています。ここでは英雄的なイメージが全く欠けています。武器を持った強靭な女性のイメージはなく、大地の中の女性の姿もなく、収穫時に背中に抱かれた赤ちゃんの姿もなく、子供に囲まれた家族の肖像の中には、伝統的なアオザイ姿の女性も見られません。このような典型的なイメージは、ベトナムの革命期の近代美術の多くに見られますが、Ngôがむしろ取り組もうとしているのは、いかに当時の女性たちの大衆文化や社会的期待が、女性たちによって明確に表わされることがなかったかということです。刑事のように、Ngôはフランスの植民地時代の記録を精査し、共産主義者のスパイ容疑者(その一部は女性でした)に対する監視があったことを明らかにしています。ほんの数例をあげれば、グエン・チ・ミンカイ(Nguyễn Thị Minh Khai)が家族と党に宛てた手紙、「Annamite」のセクシュアリティをエキゾチックに記した時代のロマンス小説などです。この抽象的な過程でNgôが明らかにしているのは、彼女たちの声、身体、アイデンティティが大部分は性的・政治的に搾取され、その役割とアイデンティティがしばしば歴史から除外されているにもかかわらず、勇敢な女性たちによるベトナム独立への共産主義の訴えにコミットしていたことです。Ngôは最終的に、女性の貢献、体験、記憶 ー つまりNgôの作品がイメージ(美の文化的、社会的なステレオタイプによって負わされるあや)を通してではなく、言葉とその行動を通して和らげようとする物語 ー に対する、歴史的な認識の欠如に目を止めます。
Hương Ngô. ‘Having Been Lost in Plain View’ 2017. Single channel video (Installation view, The Factory Contemporary Arts Centre, HCMC, Vietnam, 19 June - 30 Sept 2020).
Hương Ngô. ‘In Passing III’ 2020. In collaboration with EXUVIE by Uyên Ly. Archival pigment print on silk habotai, custom armature. 203 x 132cm (Installation view, The Factory Contemporary Arts Centre, HCMC, Vietnam, 19 June - 30 Sept 2020).
Ngôは特に、オンラインメディア、テレビ、スマートデバイス、デジタル画像操作ツールを通じて、21世紀の私たちの日常生活に存在する、あらゆる戦争技術とその監視の原動力である強制、偽造、暗号の存在をほのめかす様々な戦略を作品の中に展開し、物質性とメッセージの関係に調子を合わせます。こうした高度にデザインされたメカニズムの役目は、Ngôの作品の中でテキストとして示唆されており、隠されていて、感覚的で、魅力的で、骨が折れ、ドラマチックなものとして包含された女性の世界のステレオタイプ的な景色に、全て視覚的に挑戦する、注意深い書き言葉の選択に明らかです。これらの資質は、目に見えない、または熱変色性のインクや、カスタムメイドの活字面とその主題についての熟慮に富んだ研究、ビラ職人のゼラチン版複写技術、刺繍のステッチの背後の悲劇、または、社会における女性の心理的警戒心を表した台本を演じること、といった、彼女の素材の選択を通じて解明されます ー Hương Ngô の「Lost from view」は私たち全員に、私たちが見ているものに対するジェンダー化された理解の仕方を見直すことを求めています。
ー Zoe Butt「A Rallying in Code」より抜粋 [ Download the essay ]
'Her Name Escapes Me'
2017
In collaboration with Phương Linh Nguyễn Hand-embroidered pillow, custom armature Installation variable; pillow: 30 x 30 x 13cm (irregular)
'Proposals for a Translation'
2017
Newspaper
Installation variable; poster: 84 x 56cm (each)
作家より、ある特定の作品において、本展覧会でコラボレーションをしてくださった次のアーティストたちにも感謝いたします。
- Nguyễn Phương Linh
- Nhung Nguyễn
- Uyên Ly
- パフォーマンス作品「New Women」監督 Tricia Nguyễn
‘Lost From View’. A solo show by Hương Ngô (Installation view, The Factory Contemporary Arts Centre, HCMC, Vietnam, 19 June - 30 Sept 2020).
‘Lost From View’. A solo show by Hương Ngô (Installation view, The Factory Contemporary Arts Centre, HCMC, Vietnam, 19 June - 30 Sept 2020).
‘Lost From View’. A solo show by Hương Ngô (Installation view, The Factory Contemporary Arts Centre, HCMC, Vietnam, 19 June - 30 Sept 2020).
‘Lost From View’. A solo show by Hương Ngô (Installation view, The Factory Contemporary Arts Centre, HCMC, Vietnam, 19 June - 30 Sept 2020).
Hương Ngô(Huong Ngo, Ngô Ngọc Hương, 吳玉香)は香港で生まれ、度々フランスとベトナム間で活動しています。現在シカゴに拠点を置き、シカゴ美術館附属美術大学の Contemporary Practices 助教授。南米で育った彼女は、植民地主義と移民の歴史、特に言語、権力構造、イデオロギーとの関係性に取り組んでいます。身体とその欠如と痕跡は彼女の作品に強調され、しばしば、私たちが自身の主体形成過程をどのように可視化できるかを問うものとなっています。考古学的、未来学的に、彼女の作品は階層的に機能し、手に負えないアーカイブを絶えず作り、分解します。
生物学専攻から研究を始め、ノースカロライナ大学チャペルヒル校でBFA取得(2001年)後、シカゴ美術館附属美術大学 Art & Technology Studies 科で研究を継続(2004年MFA取得)。彼女の研究とアーカイブを元にした制作実践は、2012年のホイットニーIndependent Study Programのスタジオフェロー期間に始まりました。近年の受賞歴は「the Fulbright U.S. Scholar Grant in Vietnam (2016)」「the Archives Nationales d’Outre-Mer in France」、近年の展覧会は「DePaul Art Museum (2017)」「the Camargo Core Program (2018)」などで、女性のオーガナイザーやリエゾンの活動に関して、ベトナムの植民時代の歴史とレジスタンスの反植民地戦略を調査しています。「巧みで大胆な脱コロニアル(New City)」「交差性のフェミニストアートとはこのようなもの(Chicago Tribune)」と評される彼女の作品は、ニューヨーク近代美術館、シカゴ現代美術館、ハノイ Nhà Sàn Collective、香港 Para Site,等で展示され、3Arts、Chicago Artists Coalition、DCASE、Sàn Art等によるサポートを受けています。
The Factory は、ベトナム現代美術を展示する目的で2016年に設立された初のスペースです。独立した民間団体として、ベトナムにおける現代美術と文化トレンドについて、過去から現在に至る知識の紹介と拡充を図るため、学際的な活動を生み出し、主催しています。また、社会的企業として、The Factory は美術教育資料の閲覧室、ワークショップ、雇用のためのコミュニティスペース、カフェやレストランなども併設しています。アート作品や現地ビジネスによるすべての利益は、アートセンターの運営費を支えています。