Exhibitions

Ralph Kiggell による 大型木版画展「The Hunter」− The Toot Yung Art Center

The Toot Yung Art Center

Sep 05 - Nov 15, 2020

^{All images by Courtesy of The Toot Yung Art Center}

The Toot Yung アート・センターでは、イギリス人版画家 Ralph Kiggell による特別展を開催いたします。

Kiggell は、大型木版画作品を特別制作するため、2020年8月に Toot Yung アートセンターに滞在予定です。チェンマイの職人工房 Slow Studio の手がける天然染料に導かれ、特に地域に由来する天然素材を中心に、ランパンの SP Studio でハンドメイドされた「Saa」紙を使って制作を行います。この実り豊かなコラボレーションは、ジャングルのたくさんの詩的でシンボリックな側面を追求する、大きな木版画へと結実します。

この一連の版画制作で、巨大な Saa 紙に手刷りされた、紙や木彫りのブロックからできた巨大なコラージュ版画を作るため、Ralph Kiggell は彼の想像の森へと入っていきます。Kiggell は、作品の描写のために、ヨーロッパや日本の民族版画や、タイのラーマキエンの挿絵をゆるやかに引用します。自然の顔料や染料を使って、黒、緑、藍で豊かな植物が刷られ、樹木、クスノキ、花、滝などの中に、人物や動物、鳥などを見て取ることができます。闇と光の淵にいる狩人は誰で、狩られた者は誰なのでしょう？ ですが、ファンタジーの中で最も重要な物語とは、私たちがすでに失われているかもしれないことを知っている、地上の楽園に関するものです。

私たちはしばしば、タイの一見豊かな自然は当たり前のものと思っています。熱帯林の広大な森林は、一見変化していないように見えます。ですが、その端から、そして深い内部からも、それは絶え間なく侵食されています。動物、植物、木材の密猟者が森に入り、かけがえのない種を追い払い、汚染と無知がこの国の内外の生態系をさらに縮小へと危うくしています。タイの森林は、調和、夢、脱出、そして謎めいた場でもあり、地域の採餌者と狩猟者は、生態系の奥深くでバランスのとれた関係を築いています。（Covid-19のパンデミック期ですが私たちは、人間の森林への侵入とそのバランスへのダメージを恐れています。私たちは、私たちが取り去ったり妨げたりしていることに注意を払い、残された貴重な小さきものを守ろうと務めるする必要があります。）

The Hunter by Ralph Kiggell at Toot Yung Art Center

A video made by Marisa Marchitelli

この展覧会の機会に、数年間にわたる需要、変異、エキゾティシズムをテーマとしたリサーチをまとめたアートブック『12 Sacred Shapes』を発行いたします。全44ページのこの美しい限定版アートブックは、Ralph Kiggell と Yupha Mahamart による英語・タイ語テキストと、この幅広いリサーチのベースとなった12の "sacred shapes" の木版画を掲載しています。

Ralph Kiggell について

Ralph Kiggell はもともと中国語を学ぶために東アジアを訪れ、北京と雲南、後に香港で暮らしました。1990年に日本に渡り、伝統的な水性木版画に興味を持ち、京都での研究生となる前に吉田家の版画工房で勉強した後、10年後、東京の多摩美術大学で版画の修士課程を修了しました。ミレニアム変革期にタイへ移住、2017年に南部クラビに移住するまでバンコクのスタジオで制作を行いました。

バンコク大学、チュラロンコン大学、さらに最近ではチェンマイ大学で客員講師として教える傍ら、中国・重慶の四川美術学院でも版画と絵画を教えています。また、幅広くヨーロッパ、オーストラリア、中国、日本での滞在制作のほか、カンボジア、アメリカ、イギリスを含む世界中でワークショップを開催してきました。現在は国際木版画協会の副会長を務め、英国ロイヤル・ソサエティ・オブ・ペインタープリンター・メーカーズの会員となっています。

タイに暮らすイギリス人として、この芸術家は、アジアとイギリスとの歴史的な交流の側面と、グローバル化された時代における文化のずれ、クラフトマンシップ、グローバルな時代におけるアイデンティティと交差について探求しています。Kiggell のリサーチの多くは、生態学的不安に光を当てるため、紙、水、インク、木材といった、アジアの伝統的木版印刷の有機的でほとんど無毒の素材を使い、自然環境を讃えています。メディアを使った彼の実験と革新は、幅広く文献に取り上げられ、私たちの木版画への理解を広げる作品を作り出し、21世紀におけるこの工芸と芸術の再定義への一助となっています。